高栄 様
名古屋の様子はどうですか。熊本は新緑の頃になり、花見も藤・ツツジと移り変わりつつあります。
書類が来たので送ります。梨莉(妹の名前)の話ではパパの所へも着いたとの事ですよ。二重になってないか、telして確認してね。
梨莉は3月の始めに帰熊して、東京へ移り、今月6日に熊本で就職するとの事。現在、就職準備中です。純也(弟の名前)はあと1年大学生活をしなければならず、楽しさと苦しさ半々で毎日過ごしています。
母は9町内自治会会計も任期終了し、やっと解放されました。父と仕事に専念したいと思います。
佐敷の母は、現在、市内の尾の上比企グループ「(施設名)」という施設に入院し、昨今認知症の気配ありという事で、近日、母が行ってきます。昨年の9月見舞の折は、元気で、高栄・梨莉・純也の話もしました。少々残念ですが、母も85歳、そして父も91歳で、増々高齢化していくのは仕方ないです。
時の流れは速く、着実にパパも私も老いていくのだと認識している昨今です。
母は、貴方達には、この先悔いなく自由に豊かな感性で、自分の人生を過ごして欲しいと願っています。
長男だから、長女だからとか、次男だからのしがらみ等は一切必要なしです。
高栄も今日まで、悲しい事、嬉しい事、苦しい事、色々な経験をし、大人に成ったでしょう。
後を振り返る事なく、前を見て進みなさい。母は+(プラス)思考でここまできました。
決して、過去を振り返ってはいけません。高栄への母からのメッセージです。いつも元気で笑顔の高栄を母は心の中に思っています。
自分を信じて前進して下さい。
(中略)
高栄も身体に気を付けて、仕事に専念してね。
母も頑張ります。
4/17 母
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自分は、父や母の書く字が大嫌いで書道を習い始めた。
なんとなく癖があり、幼いながら「こんな字は書きたくない」と一種の軽蔑すら覚えた。
祖母(母方)の知り合いの書道教室にお世話になり、一応中学いっぱいまでやり通したと思う。
それからは至る所で字を褒められるようになり、得意気になり、また綺麗に字を書きたいと思い、とにかく親に対して優越感を抱きながら字を丁寧に丁寧に書き続けた。
祖母が亡くなってから、自分のいろんな書道の作品を見つめ、自分がなぜ字にこんなにもこだわり続けたかを見直す機会があった。そこでも気づかなかったことがある。
それは、親の書く字が、こんなにも味があり、想いがこもっているということ。
在学中、一度ももらわなかった手紙。
不意に名古屋に届いた一通の手紙。
仕事で気が滅入った時。子供のことで悩んだ時。思うような毎日が送れない時。
最近はよく手紙を見返して、心を熊本まで飛ばしながら、想いにふけっている。

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